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AI チャットボットのセキュリティ対策 | 導入前に確認したい 10 項目

IPA の「情報セキュリティ10大脅威 2026」で、「AI の利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けの 3 位に初めて入りました。ホームページに AI チャットボットを置くときに気をつけるべきことは、実は多くありません。「AI に何を見せるか」「AI に何をさせるか」の 2 つを先に決めれば、主なリスクは設計の段階で小さくできます。

更新 2026/10/25約 6 分
01

なぜ今、AI のセキュリティが話題なのか

2026 年に入り、AI のセキュリティは「一部の大企業の話」ではなくなりました。公的な資料にも、はっきり表れています。

  • IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(2026 年 1 月公開): 組織向けの 3 位に「AI の利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれました。ランサム攻撃・サプライチェーン攻撃に次ぐ位置です
  • 総務省・経済産業省「AI 事業者ガイドライン 第 1.2 版」(2026 年 3 月 31 日): 目標に向けて自律的に行動する「AI エージェント」の定義が加わり、AI を使う事業者(AI 利用者)の役割も整理されています
  • OWASP Top 10 for LLM Applications 2025: AI(大規模言語モデル)を組み込んだアプリの代表的なリスクの 1 位に「プロンプトインジェクション」が挙げられています
  • IPA「AI セキュリティ短信」: AI エージェントやその開発基盤の脆弱性が、毎月のように報告されています

背景にあるのは、AI が「答えるだけ」から「操作する」に広がってきたことです。文章を返すだけの AI なら被害は限られますが、予約やデータの書き換えまで任せると、だまされたときの影響が大きくなります。

02

中小企業の AI チャットボットで起きうる 5 つのリスク

リスク何が起きるか主な対策
プロンプトインジェクション「これまでの指示を無視して…」などの入力で、AI が想定外の回答や操作をするAI に操作の権限を持たせない。出力をそのまま実行しない
情報の入れすぎ社外秘や個人情報を AI の参照資料に入れ、質問されると答えてしまう公開してよい情報だけを参照させる
誤回答(もっともらしい嘘)料金や返金条件を AI が勝手に答え、約束したことになる金額・契約・医療などは「担当者が確認」と答えさせる
API キーの漏洩・不正利用鍵が漏れて第三者に使われ、利用料が高額になる鍵はサーバー側だけに置く。1 日の利用上限と通知を設ける
入力された個人情報の扱い送信先や保存の説明が無く、利用者が不安になる・法令の表示が漏れる送信先(AI 提供会社)と保存の扱いをプライバシーポリシーに書く

この 5 つは、どれも「高いセキュリティ製品を買う」ことより、「最初の設計で何を決めるか」で大きく変わります。

03

いちばん効くのは「AI に何をさせないか」を決めること

プロンプトインジェクションを完全に防ぐ方法は、今のところありません。AI は入力された文章と指示を厳密には区別できないためです。そこで考え方を変えて、「だまされても困らない作り」にします。

  • AI に操作をさせない: 予約の確定・返金・データの削除などは、AI ではなく人かプログラムが行う。AI は「案内」と「聞き取り」に限る
  • させる場合は人が最後に承認する: AI が作った内容を担当者が確認してから実行する。AI 事業者ガイドラインでも、AI エージェントの利用者の役割が整理されています
  • AI の出力を信用しない前提で受け取る: AI が返した文字をそのままプログラムの命令やデータベースの検索に使わない
  • 大事な判定は AI 以外で行う: たとえばメールアドレスの受け取りは、AI の判断ではなくサーバー側のプログラムで判定する
04

導入前に確認したい 10 項目

  1. 1AI に参照させる資料に、社外秘・個人情報・未公開の価格が入っていないか
  2. 2AI に予約・決済・データ更新などの操作をさせていないか(させるなら人の承認があるか)
  3. 3料金・契約・返金・医療や法律の判断を、AI が断定して答えない設定になっているか
  4. 4API キーがブラウザ側(ページのソース)に出ておらず、サーバーだけにあるか
  5. 51 人あたり・1 日あたりの利用上限があり、超えたら止まって通知が来るか
  6. 6AI 提供会社の規約で、送った内容が学習に使われないか確認したか(事業者向けの API は既定で使わないものが多い)
  7. 7送信先の会社と所在国、保存の扱いをプライバシーポリシーに書いたか
  8. 8利用者に「パスワードや個人情報を入力しないで」と案内しているか
  9. 9AI が答えられないときに、人へ引き継ぐ導線(フォーム・メール)があるか
  10. 10会話の記録を、誰がどこで見られるか(管理画面の権限)が決まっているか

1〜5 は「作り」の問題、6〜10 は「運用と表示」の問題です。作りの部分は、後から直すより最初に決めておく方がずっと安く済みます。

05

Co-Craft のサイトの AI チャットでやっていること

このサイトの右下にある AI チャットも、上の考え方で作っています。実際に入れている仕組みは次のとおりです。

  • AI に操作の権限を持たせていない: AI は会話の返答だけを作り、データの登録や更新はしません
  • メールアドレスの受け取りはサーバー側で判定: AI の判断に頼らず、プログラムで形式を確認しています
  • 利用上限を 3 段階で設けている: 接続元ごとの回数制限、1 つの会話あたりの上限、サイト全体の 1 日あたりの上限。上限に達すると止まり、管理者に通知が届きます
  • API キーはサーバーだけに置いている: ページのソースからは見えません
  • 送信先をプライバシーポリシーに明記: AI の提供会社(米国)に送信すること、学習には使われないこと、保存と削除の扱いを書いています

AI チャットボットの導入をご相談いただく場合も、同じ考え方で設計をご提案します。

Q&A

よくあるご質問

1
AI チャットボットを置くと、会社の情報が漏れますか?
AI に参照させた情報は、質問のしかたによっては答えてしまう可能性があります。そのため、参照させるのは「ホームページに載せてよい情報」だけにするのが基本です。社外秘や個人情報を参照資料に入れなければ、AI から漏れる情報はありません。
2
プロンプトインジェクションは防げますか?
完全に防ぐ方法は今のところありません。対策の中心は「だまされても困らない作り」にすることです。AI に予約や返金などの操作をさせない、させるなら人が最後に承認する、AI の出力をそのまま実行しない、の 3 つで影響を小さくできます。
3
入力された内容が AI の学習に使われることはありますか?
提供会社や契約の種類によって違います。事業者向けの API は、既定で学習に使わない規約のものが多いですが、無料の個人向けサービスは設定しだいで使われることがあります。導入前に、使うサービスの規約を確認してください。
4
セキュリティ対策をすると費用は大きく上がりますか?
多くは設計で決まる部分なので、後から製品を買い足すより、最初に「何を見せて、何をさせないか」を決める方が安く済みます。利用上限や通知の仕組みも、作る段階で入れておけば大きな追加費用にはなりません。
5
IPA や国のガイドラインに対応する必要はありますか?
AI 事業者ガイドラインに法的な拘束力はありませんが、AI を使う事業者として何に気をつけるべきかが整理されています。まずは本記事の 10 項目を確認し、気になる点があれば専門家にご相談ください。

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