AI で何が変わったのか
なりすまし詐欺そのものは昔からあります。IPA の「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの 10 位に「ビジネスメール詐欺」が 9 年連続で入っています。AI が変えたのは、その「出来の良さ」と「手間」です。
- 不自然な日本語が消えた: 以前は怪しい日本語で見分けられた詐欺メールが、自然な文章で届く
- 声をまねできる: 公開されている動画や電話の短い音声から、本人そっくりの声を作られることがある
- 顔と動きをまねできる: ビデオ会議で、上司や取引先の顔を使った偽の参加者が現れる
- 大量に、相手ごとに作れる: 一人ひとりの役職や取引に合わせた文面を、手間をかけずに用意できる
つまり「怪しいかどうかを見て判断する」という従来の守り方が通用しにくくなっています。
よくある手口
| 手口 | どんな連絡が来るか | 狙われるもの |
|---|---|---|
| 取引先のなりすまし | 「振込先の口座が変わりました」というメールや請求書 | 請求の支払い |
| 社長・上司のなりすまし | 「急ぎで内密に、この口座へ送金して」という電話・チャット | 臨時の送金 |
| 偽のビデオ会議 | 上司や同僚が複数参加しているように見える会議で送金を指示 | 高額の送金 |
| 偽のログイン画面 | 本物そっくりのメールから、偽のログインページに誘導 | パスワード・アカウント |
どの手口にも共通するのは「急がせる」「内密にさせる」「いつもと違う手順を求める」の 3 つです。
見破るより、手順で止める
偽物の精度は上がり続けるため、「よく見れば分かる」に頼る対策はいずれ破られます。効果があるのは、たとえだまされても、お金や権限が動かない仕組みにすることです。
- 1口座の変更は、届いた連絡とは別の手段で確認する: 以前から登録している電話番号にかけ直す。メールに書かれた番号には電話しない
- 2一定額以上の送金は 2 人で承認する: 1 人の判断で動かせない金額の線を決める
- 3会議中・電話中の即時送金をしない: どんなに急かされても、いったん切ってから確認する
- 4合言葉や確認の質問を決めておく: 社長からの急ぎの依頼には、本人しか知らない確認をする
- 5「急ぎ・内密」は止まる合図にする: 社内で「その 2 つが揃ったら必ず確認する」と決めて共有する
手順は、社長自身が守ることが大切です。「社長の依頼だから確認せずに送金する」という例外があると、そこを狙われます。
仕組みで支える
- 送金や口座変更の申請を記録に残す: 誰が・いつ・何を承認したかが残る仕組みにする
- 支払先の口座は台帳で管理する: 変更があったときに、承認なしには書き換わらないようにする
- メールに頼らない: 口座変更や請求のやり取りを、取引先と決めた方法に限る
- アカウントは 2 段階認証にする: 偽のログイン画面でパスワードを取られても、すぐには入られない
小さな会社では、承認の手順をメールや口頭で回していることが多く、そこが弱点になります。簡単な申請・承認のツールでも、記録が残るだけで不正はぐっと起きにくくなります。
だまされたかもと思ったら
- 1すぐに銀行に連絡し、送金の取り消し(組み戻し)ができないか相談する
- 2警察(都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口)に相談する
- 3取引先に、本物の連絡先で事実を確認する
- 4パスワードを入力してしまった場合は、すぐに変更し、他で同じパスワードを使っていないか確認する
時間がたつほど取り戻せる可能性は下がります。恥ずかしがらずに、すぐ報告できる雰囲気を社内につくっておくことも対策の一つです。
よくあるご質問
- AI で作った偽の声や映像は見破れますか?
- 見破るのは年々難しくなっています。見分け方を覚えるより、送金や口座変更は別の手段で確認する・2 人で承認する、といった手順で止める方が確実です。
- 小さな会社も狙われますか?
- 狙われます。承認の仕組みが社長 1 人や経理 1 人に集中している小さな会社ほど、1 回だまされるだけで送金まで進んでしまいやすいからです。
- 社長からの急ぎの依頼まで確認するのは失礼では?
- 事前に「急ぎの送金依頼は、社長からでも必ず確認する」と社長自身が決めて伝えておけば、失礼にはなりません。むしろ例外を作らないことが会社を守ります。
- 取引先から口座変更の連絡が来たらどうすればよいですか?
- 届いたメールや請求書に書かれた連絡先ではなく、以前から知っている電話番号や担当者に直接確認してください。確認できるまで、新しい口座には送金しないのが原則です。
- 承認の仕組みを作るのにお金はかかりますか?
- まずはルールを決めて共有するだけでも効果があります。記録を残したい場合は、送金申請と承認を記録できる簡単な社内ツールを作る方法もあり、既存の業務に合わせた小さな仕組みから始められます。
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