なぜ今、社内ルールが必要なのか
IPA の「情報セキュリティ10大脅威 2026」で、「AI の利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けの 3 位に初めて選ばれました。その中心にあるのは、高度な攻撃よりも「社員が便利だからと機密情報を AI に入力してしまう」という身近なリスクです。
- 入力した情報の行き先: 無料の個人向けサービスでは、設定によって入力内容が AI の学習に使われることがある
- 個人アカウントの利用: 会社が把握できないアカウントに、顧客情報や見積もりが入っていく
- 出力をそのまま使う: もっともらしい誤り(ハルシネーション)を確認せずに、顧客への回答や資料に使ってしまう
- 著作権・権利の問題: 他社の文章や画像に似たものを、そのまま公開してしまう
どれも「AI を禁止する」ことでは防げません。社員は便利なものを使い続けるからです。必要なのは、安全な使い方をはっきり決めて、迷わず使える状態にすることです。
最初に決める 7 項目
- 1使ってよいサービスを決める: 会社として契約した法人向けプランや、入力内容を学習に使わない設定を確認したサービスに限る
- 2入力してはいけない情報を決める: 顧客の個人情報、取引先の機密、未公開の数字、パスワード、契約書の原本など
- 3アカウントは会社のものを使う: 個人のアカウントで業務の情報を扱わない。退職時に止められるようにする
- 4出力は人が確認してから使う: 特に、顧客への回答・金額・法律や医療に関わる内容
- 5公開する前に権利を確認する: 生成した文章や画像が、既存の作品に似すぎていないか
- 6AI を使ったことを必要に応じて明示する: 社外向けの成果物で、取引先から求められる場合など
- 7困ったときの相談先を決める: 「これは入力してよいか」を聞ける社内の担当者
最初から細かい規程を作る必要はありません。A4 1 枚で、この 7 項目に自社の答えを書くところから始めるのが現実的です。
「入力してはいけない情報」の決め方
いちばん大事なのは、社員が迷わない書き方にすることです。「機密情報は入力しない」だけでは、何が機密なのか人によって判断が分かれます。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入力してよい | 公開済みの自社情報、一般的な質問、個人や社名を伏せた文章 | 使ってよい |
| 加工すれば入力してよい | 顧客名を伏せたメールの下書き、数字を丸めた資料 | 固有名詞と具体的な数字を消してから |
| 入力してはいけない | 顧客の個人情報、取引先の機密、未公開の決算・価格、パスワード・API キー | どのサービスでも入力しない |
表の形にして、具体例を自社の業務に合わせて書き換えるのがおすすめです。迷ったら入力しない、を原則にします。
雛形や公的な資料を活用する
- JDLA「生成 AI の利用ガイドライン」: 日本ディープラーニング協会が、社内ルールの雛形を無料で公開しています(第 1.1 版・2023 年 10 月)。自社の業務に合わせて追加・修正して使う前提の資料です
- AI 事業者ガイドライン(第 1.2 版): 総務省と経済産業省が 2026 年 3 月に公表。AI を業務で使う事業者(AI 利用者)が気をつけるべきことが整理されています。法的な拘束力はありません
雛形は作られた時期の前提(使われているサービスや機能)を含んでいます。そのまま配るのではなく、今使っているサービスと業務の例に書き換えてから使いましょう。
ルールを守ってもらうための工夫
- 使ってよい道具を会社が用意する: 安全な選択肢が無いと、個人のアカウントに流れる
- よくある使い方の例を添える: 「議事録の要約」「メールの下書き」など、OK な使い方を具体的に示す
- 年に 1〜2 回見直す: AI のサービスは数か月で機能や規約が変わる
- 違反を責めるより相談しやすくする: 入力してしまったときに、すぐ報告できる雰囲気をつくる
社内の業務に合わせて AI を組み込みたい場合は、入力してよい情報だけを扱える専用のツールを作るという方法もあります。
よくあるご質問
- 社員に生成 AI を禁止した方が安全ですか?
- 禁止しても、便利なものは個人のアカウントでこっそり使われがちで、会社が把握できない分かえって危険です。使ってよいサービスと入力してはいけない情報を決めて、安全に使える状態をつくる方が現実的です。
- 入力した内容は AI の学習に使われますか?
- サービスと契約の種類によって違います。法人向けのプランや事業者向けの API は、既定で学習に使わない規約のものが多い一方、無料の個人向けサービスは設定しだいで使われることがあります。使う前に規約と設定を確認してください。
- 社内ルールは何ページくらい必要ですか?
- 最初は A4 1 枚で十分です。使ってよいサービス、入力してはいけない情報、出力の確認、相談先の 4 つが書かれていれば、何も無い状態より大きく安全になります。
- AI が作った文章をそのまま顧客に送ってもよいですか?
- 必ず人が確認してから送ってください。AI はもっともらしい誤りを含むことがあり、特に金額・日付・契約条件・法律や医療に関わる内容は、確認なしに使うと信用を損ないます。
- ルールを作るのを手伝ってもらえますか?
- Co-Craft は法務の助言は行えませんが、社内で安全に使える AI ツールの導入や、入力してよい情報だけを扱う仕組みづくりはご相談いただけます。規程の内容は、必要に応じて専門家にご確認ください。
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